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ケーイーコーポレーションを紹介するコラム

第9回後継者教育について

長男 梶本浩太

わが社の後継者は私の長男です。
長男は、私が先代(私の父)から「新しい事業を本業の上に立てろ」と言われ、どのような事業を起こし、またそれを軌道に乗せるためにはどうしたら良いのかと悩む姿を幼い頃よりずっと近くで見ていました。

長男 梶本浩太

そのような親の姿を見ていると普通は「自分は親の跡を継ぎたくない」と思いそうなものです。しかし長男はプラス思考のところがあるのか、中学生の頃にはおぼろげながら「自分も祖父や父の跡を継ぐのかな」と考えるようになったようです。

高校2年生の頃、会社を継ぐ決心がついたのか、「親父の会社を継ぐには大学は何学部に進めばいい?」と尋ねてきたことがありました。

大学卒業後の息子を見ておりますと、わが社の事業承継は順調に推移していると思います。このコーナーの7回目で「事業承継について」というテーマでお話をしました。今回は具体的に後継者として息子にどのような教育をしてきたかお話ししようと思います。一部重複する部分もあるかもしれませんがご容赦ください。

社外教育

1.大学卒業後、当社取引先にて6年間修業し営業職を中心に研鑽を積む

土台となる既存事業のうえに新たな事業を作りあげたいと考え、私は夢中に取り組んできました。新事業が軌道にのってから既存事業の人脈作りにとりかかりましたので、主要取引先との人脈を広げる時間があまりとれませんでした。そこで私は浩太には早くから幅広い人脈を作ってもらいたいと考え取引先での修行をお願いしました。また浩太が経営者となった時、従業員の気持ちを理解する上で、サラリーマンを経験したことはきっと役に立つでしょう。

また、これからの経営者は、私の経験から、営業に強い経営者であるべきだと考えました。技術は入社してからでも学べます。実際に私は文系の出身ですが、会社の技術者から学びました。お客様からは「文系ですか?工学系の出身だと思っていました。」とよく言われました。

2.コンサルタントより経済情勢と将来の事業展開について学ぶ

「経営者にとって一番大切な事は、どれだけ先の世の中を見通す事が出来るか。」 私が大学院在学中に指導教授からよく言われてきた言葉です。確かに今、世界や日本の経済環境の先行きは不透明な時代です。当社を取り巻く経営環境等を常に学びながら、経営のビジョン作りに反映させなければなりません。浩太にその様な経営者になって貰いたいとの思いから、コンサルタントに指導をお願いしました。

3.「よい協力会社とは」というテーマで業界OBの研修をうける

浩太が当社に入社した当時、私が携わってきた事業は関連会社に移管しており、取引はほぼ大手企業からの受注が中心となっておりました。私は大手企業の資材や調達担当者への営業経験はあまりありませんでしたので、私から浩太に指導するよりも取引先の元資材担当者より、発注する立場の方々の考え方や気持ちについてのご教授頂いたほうがいいと考えました。

社内教育

1.社長、父親として私からの公私に渉るアドバイス

私は社長であると同時に浩太の父親でもあります。従って、私から公私に渉るアドバイスをしていくのは当然の事と考えております。私が多忙な折も、浩太から相談があれば必ず時間を空け、彼の話に耳を傾けてきました。入社当時は仕事についてよく相談にきましたが、徐々に仕事を覚え、自信がついてきたのか、以前のようには来なくなりました。最近は私から仕事や家でのことなどを、時折々に聞く様な状況となっております。

2.生産管理システムや物づくりの考え方を元役員より学ぶ

当社独自の“付加価値経営”を構築した元役員から、生産管理システムを学ぶのが一番よいと考えました。その方は長きにわたり自分の人生を当社に捧げたと言っても過言ではない、プロパー社員で、浩太に愛情をもって工場の隅々の事まで、熱心に教えて下さいました。浩太がどのくらい成長したのか気になる様で、今でも時々会社に顔を出して下さいます。

3.事業価値向上を目指す事業計画策定の方法を財務担当者より学ぶ

財務分析を覚え、BSやPLをどのように整えて行くかを学ぶことはさる事ながら、会社の価値を上げて行く事が経営者として重要課題のひとつと考えています。私は、一人当りの付加価値の向上を一番大切な指標と考え、会社の価値を上げるための経営に取り組んでいるつもりです。
浩太が今後どの様な指標を中心に経営に取り組んで行くのかは現時点では解りません。まずはしっかりとした事業計画を策定することがその理解のスタートラインになるのではないかと思います。現在、浩太は事業部長や財務担当者と共同で原案を作成しているようで、その完成を楽しみにしております。

4.5S活動、ISO活動の責任者を経験させて、リーダーとしての資質を学ぶ

やはり、経営者は全社員のリーダーとしての資質を高めて行かなければなりません。その為には自分が先頭に立って社員を牽引していくという経験が最も大切です。
このような経験を積んだ結果として、息子は5S活動リーダーとして工場内の安全確保及び生産効率の向上、既存取引先の深堀り、新規取引先の開拓などに一定の実績をあげたのではないかと思っています。また最近ではBCP策定活動においても率先して取り組む姿勢も見られ、会社幹部を牽引する姿も見せています。

息子は最終決断をしなければならない局面においてとまどいを感じることがあるようです。これは社長である私も今でも感ずることでTOPの宿命かと思いますが、これから様々な経験を積むことにより徐々に身についていくのではないかと思います。

「継続は力なり」という言葉があります。長男も中学生の頃には、「自分は父の後継者だ」という自覚を持ち始め、「将来は社長になる」という気持ちが十代の頃から徐々に醸成されたのだと思います。わが社は創業110年を迎えました。息子は社長としてケーイーコーポレーションがさらに継続していく経営を担ってくれるものと考えています。

これからの時代は企業経営にとって厳しい環境であると思います。息子には、私がMBA時代に学んだ“going concern”という言葉を大切に、継続することを第一に考え、社長業に専心してもらいたいと思います。

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